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事業承継で使える公庫の融資|「事業承継・集約・活性化支援資金」が使える4つの場面

執筆者の写真: 松本 裕之
松本 裕之
13 時間前
読了時間: 6分

事業承継というと、株の評価や相続税の話が先に出がちです。けれども実際には、事業承継のときに「まとまったお金が必要になる」場面が少なくありません。後継者が株を買い取る、ほかの会社から事業を引き継ぐ、経営者保証を外したら銀行から借りにくくなった、といった場面です。


日本政策金融公庫には、こうした場面のための「事業承継・集約・活性化支援資金」という融資があります。この記事では、この融資が使える場面と主な条件、当事務所が支援した例、借りる前に確かめておきたいことをまとめます。内容は、2026年10月時点の公庫の公表資料に基づいています。


事業承継で、なぜお金が必要になるのか

親族への承継でも、株が先代や親族、役員などに分かれて持たれていると、後継者が経営を安定させるために株を集める必要があります。贈与や相続で渡せない株は、買い取ることになります。


第三者から事業を引き継ぐ場合は、株や事業用の資産を買い取るお金が必要です。また、承継をきっかけに経営者保証を外すと、取引銀行の対応が変わり、資金繰りが厳しくなることもあります。


この融資が使える4つの場面

1. 株や事業用の資産を買い取って、経営権をまとめる

安定した経営権を確保するために、株や事業用の資産を取得する場合に使えます。中小企業事業では、会社が自社の株を買い取る(自己株式の取得)場合の区分も設けられています。


2. ほかの会社や個人事業主から、事業を引き継ぐ

後継者のいない会社や個人事業主から事業を引き継ぐ場合です。引き継ぐ側だけでなく、引き継がれる側の資金も対象に含まれます。公庫は、事業を譲りたい方と譲り受けたい方をつなぐ無料の「事業承継マッチング支援」も行っています。


3. 経営者保証を外したら、銀行から借りにくくなった

承継のときに、取引銀行へ経営者の個人保証を外すよう申し入れた結果、資金を借りにくくなった場合です。公庫が経営者保証を免除して貸し付けます。


4. 承継をきっかけに、新しい取組みを始める

承継や事業の集約から5年以内に、新しい分野への進出や事業の転換(第二創業)、引き継いだ事業の統合(PMI)に取り組む場合です。当事務所が支援した例は、この場面にあたります(下の「当事務所の支援例」)。


このほか、現経営者と後継者が事業承継計画を作り、おおむね10年以内に承継する見込みがある場合にも、計画の実施に必要な設備資金・運転資金に使えます。


当事務所の支援例

事業を引き継いだ経営者の方が、承継をきっかけに主な事業を切り替える(事業転換)にあたり、この融資を利用しました。当事務所は、次の4つを支援しました。


  • 承継後の事業計画書づくり(新しい事業で、どのように売上と利益を上げるか)

  • 借入額と返済の見通し(資金繰り表と返済計画)

  • 申込みに使う月次決算と試算表の整備

  • 公庫との面談への同席


事業転換では、これまでの実績がそのまま新しい事業の裏付けにはなりません。新しい事業でなぜ利益を出せるのか、借りたお金をどう返すのかを、数字と言葉の両方で説明できるかどうかが大切です。


主な条件

会社の規模で、窓口と限度額が変わる

小規模な事業者は「国民生活事業」、それより大きな中小企業は「中小企業事業」が窓口です。融資限度額は、国民生活事業が別枠で7,200万円、中小企業事業が直接貸付で14億4千万円です。


返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が10年以内で、どちらも5年以内の据置期間(元金の返済を待ってもらえる期間)を設けられます。利率は、使いみちや担保の有無などで変わり、金融情勢によって見直されます。最新の利率は公庫のページで確かめてください。


経営者保証を外せる場合がある

国民生活事業では、法人がこの融資を使う場合、「経営者保証免除特例制度」の対象になります。返済できる見込みがあることが前提で、保証を外すことによる利率の上乗せはありません。


後継者個人が借りられる場合がある

「経営承継円滑化法」にもとづく都道府県知事の認定(広島県では広島県知事)を受けると、後継者である代表者個人が、ほかの株主が持つ自社株や事業用の資産を買い取る資金を借りられる場合があります。認定を受けても、融資には別に審査があります。


認定経営革新等支援機関の支援で、条件がよくなる場合がある

中小企業事業では、認定経営革新等支援機関の支援を受けて計画を作るなどの要件を満たすと、利率が下がる区分があります。国民生活事業でも、引き継いだ事業の統合(PMI)に取り組む場合は、認定経営革新等支援機関の支援を受けて計画を作ることが条件です。


借りる前に確かめること

株の値段で、必要なお金が決まる

買い取りに必要なお金は、株の評価額で決まります。業績のよい会社ほど株の評価額は高くなり、借りる額も大きくなります。借入を考える前に、まず自社株の評価をして、いつ、誰から、どれだけ買うかを決めることが出発点です。


返すのは、承継したあとの会社の利益

後継者個人が借りた場合も、返済の元手は、役員報酬や配当として会社から受け取るお金です。承継後に会社がどれだけ利益を出せるかを経営計画で見通し、無理のない返済の計画を立てる必要があります。公庫の審査でも、この見通しが問われます。


贈与・相続で渡すか、買い取るかを比べる

株を渡す方法は、買い取りだけではありません。贈与や相続で渡す方法や、贈与税・相続税の納税が猶予される事業承継税制を使う方法もあります。方法によって、税金と、必要なお金の額や時期が変わります。(詳しくは「相続対策は「節税」から始めない」の記事)


こんな方は、ご相談ください

  • 5〜10年以内に、事業承継を考えている

  • 先代や親族、元役員など、後継者以外の方が株を持っている

  • 承継をきっかけに、経営者保証を外したい

  • 後継者のいない会社や個人事業主から、事業を引き継ぎたい


当事務所では、自社株の評価から、承継後の経営計画、公庫や銀行への融資の申込みまでを、まとめてお手伝いします。第三者からの事業の引き継ぎ(M&A)のご相談もお受けします。初回の無料相談をご利用ください。


まとめ

  • 日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」は、株や事業用の資産の買い取り、他社からの事業の引き継ぎ、経営者保証を外したあとの資金繰り、承継後の新しい取組みに使えます。

  • 会社の規模で窓口と限度額が変わります。法人は、経営者保証を外して借りられる場合があります。

  • 借りる前に、自社株の評価、承継後の経営計画、贈与・相続との比較を済ませておくことが大切です。


この記事は、制度の一般的な説明です。実際に借りられるか、どの条件が当てはまるかは、公庫の審査によって決まります。


出典


この記事を書いた人

松本 裕之(税理士)

松本裕之税理士事務所(広島市中区)代表。中国税理士会所属、税理士登録番号 第104810号。2006年に税理士登録、2013年に開業。税務顧問のほか、月次決算と経営計画、融資支援、国際税務、事業承継を扱っています。

 
 

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