設備投資の融資を申し込む前に準備する6つのこと|金融機関が知りたいのは2点

設備投資の融資は、見積書を出せば決まるものではありません。金融機関が知りたいのは、なぜ今その投資が必要なのか、そして本当に返せるのか、の2点です。
先日、製造業の顧問先様の、設備投資と運転資金の融資申込みをお手伝いしました。この記事では、そのときに一緒に準備した6つのことを、順番にご紹介します。これから設備投資を考えている経営者の方の参考になれば幸いです。
守秘義務の観点から、お客様が特定されないよう内容を一部加工しています。
金融機関が知りたいのは2点
融資の担当者が確かめたいことは、突きつめると次の2つです。
なぜ今、そのお金が必要なのか
本当に返せるのか
社長の頭の中には、投資の理由も、その先の見通しもあります。ただ、頭の中にあるだけでは相手に伝わりません。根拠のある数字と計画に落とし込んで、はじめて伝わります。これからご紹介する6つの準備は、すべてこの2点に答えるためのものです。
今回のご相談
長年ものづくりを続けてこられた会社です。代替わりを機に、これまで外部に頼んでいた工程を、自社で担う体制へ切り替えることを決められました。
技術力も、取引先からの信頼もあります。一方で、成長している会社ならではの課題を抱えておられました。
受注が増えるほど、先に出ていくお金も増える
働く環境を整えて、人を育てたい
そこで、設備投資の資金と、当面の運転資金をあわせて申し込むことにしました。
準備した6つのこと
1. 月次決算で「今」の業績を示す
決算書に載っているのは、過去の数字です。決算から半年たてば、金融機関は「今はどうなっていますか」と尋ねます。日本政策金融公庫(国民生活事業)でも、法人は決算後6か月以上たっている場合に、試算表の提出を求められます。
試算表が何か月も遅れていると、今の業績を説明できません。毎月きちんと締めておくことが、融資の準備の土台になります。
2. 会社の強みと、新しい体制の狙いを言葉にする
何を作っている会社で、どこが強みなのか。取引先はどこで、新しい体制で何を目指すのか。これを文章にまとめます。
日本政策金融公庫では、はじめて取引をする場合に「企業概要書」を提出します。取扱商品やサービスなど、会社の内容を書く書類です。民間の金融機関でも、同じ内容を面談で聞かれます。空欄を埋めるのではなく、社長の考えが伝わる言葉にしておくことが大切です。
3. 設備投資の目的と効果を整理する
何のための投資かを、はっきりさせます。古い設備の入れ替えなのか、生産量を増やすためなのか、外に頼んでいた工程を自社で行うためなのか。目的によって、説明する効果が変わります。
効果は、できるだけ数字で示します。外注費がいくら減るのか、生産量がどれだけ増えるのか、粗利益がどう変わるのか。あわせて、設備の見積書を用意します。設備資金の申込みには、見積書が必要です。
4. 中期の利益計画を作り、返済の元手を確かめる
借りたお金は、利益から返します。返済の元手の目安は、税金を払ったあとの利益に、減価償却費を足した金額です。いまある借入の返済と、今回の借入の返済を合わせた金額が、この範囲に収まるかを確かめます。
設備を入れた年は、減価償却費が増えて利益が減ることがあります。単年ではなく、3年から5年の利益計画で示すと、投資の効果と返済の見通しが伝わります。
5. 1年先までの資金繰り計画を作る
利益が出ていても、お金が足りなくなることがあります。材料費や人件費の支払いが、売上の入金より先に来るためです。受注が増えるほど、この差は大きくなります。
月ごとに、入ってくるお金と出ていくお金を並べます。法人税や消費税を納める月、賞与を払う月も入れておきます。納税の資金まで織り込んでおくと、運転資金がいくら必要かを、根拠をもって説明できます。
6. 面談で聞かれることを準備する
面談では、社長ご自身の言葉で答えることが求められます。あらかじめ、聞かれそうなことと答えを整理しておきます。
なぜ今、この投資なのか
投資の効果は、どんな根拠で見込んでいるのか
受注の見通しはどうか
計画どおりに進まなかった場合は、どうするのか
社長はどんな思いで事業を始めたのか、これからどうしていきたいのか
(創業融資の場合)事業の内容について、どんな経験が何年あるのか
答えを丸暗記する必要はありません。1から5までの準備ができていれば、数字を見ながら、自分の言葉で答えられます。
相談する時期は、発注の前
設備を発注する前の段階でご相談ください。利益計画と資金繰り計画を一緒に作り、適正な投資かどうかを、社長ご自身に納得していただいてから進めたいからです。過大な投資をして、あとで返済に苦しむ例は少なくありません。
ご相談から融資の実行までは、必要な資料がそろっていれば最短で1か月ほどです。利益計画や資金繰り計画を一から作る場合は、2〜3か月の余裕をみてください。
まとめ
金融機関が知りたいのは、なぜ今お金が必要なのか、本当に返せるのか、の2点です。
月次決算、会社の強み、投資の効果、利益計画、資金繰り計画、想定問答の6つを準備します。
相談は、設備を発注する前に。
当事務所では、計画書や資金繰り表の作成から面談の準備まで、融資支援を行っています。2017年から取り組み、2026年3月31日現在で34件の融資をお手伝いしてきました。金融機関が決算書をどう評価しているかは、社長の成績表でご確認いただけます。
「設備投資をしたいが、融資の相談のしかたが分からない」「決算書は作っているが、経営には活かせていない」という方は、当事務所の無料相談をご利用ください。ほかの税理士に顧問を依頼されている方からのご相談も受け付けています。
この記事は、融資の準備についての一般的な説明です。必要な書類や審査の内容は、金融機関や融資の制度によって異なります。
この記事を書いた人
松本 裕之(税理士)
松本裕之税理士事務所(広島市中区)代表。中国税理士会所属、税理士登録番号 第104810号。一般社団法人融資コンサルタント協会認定 SP融資コンサルタント。2006年に税理士登録、2013年に開業。税務顧問のほか、月次決算と経営計画、融資支援、国際税務、事業承継を扱っています。

