免税店のリファンド方式で何が変わるか|10月31日までの確認と経理処理

2026年(令和8年)11月1日から、免税店(輸出物品販売場)の制度が「リファンド方式」に変わります。これまでは店頭で消費税を引いて販売していましたが、11月からは、いったん税込価格で販売し、お客様が出国するときに税関の確認を受けたあとで、消費税分を返金する形になります。
この記事では、免税店を営む中小企業の経営者・経理担当の方に向けて、変わる点、10月31日までに確認すること、経理と消費税申告の処理をまとめます。内容は、2026年10月3日時点の国税庁の公表資料に基づいています。
リファンド方式の流れ
11月1日午前0時以降の販売から、次の流れになります。
店頭では、税込価格で販売します。
販売のつど、購入記録情報を国税庁の免税販売管理システムへ送ります。
お客様は、購入した日から90日以内の出国時に、税関で持ち出しの確認を受けます。
店は、税関が確認したという情報(税関確認情報)をシステムから取得して保存します。
店からお客様へ、消費税に相当する金額を返金します。
免税になるのは、4の時点です。購入記録情報と税関確認情報を保存していない販売は、相手が外国人旅行者であっても免税になりません。
これまでと変わる点
店頭の価格
これまでは消費税を引いた価格、11月からは税込価格です。
免税が決まる時点
これまでは販売したとき、11月からは税関確認情報を保存したときです。
一般物品と消耗品の区分
廃止されます。これに合わせて、消耗品の上限(同じ店で1日50万円まで)と、特殊包装もなくなります。
購入の下限額
税抜5,000円以上のまま、変わりません。
高額な商品
税抜の単価が100万円以上の商品は、商品を特定できる情報を購入記録情報に入れます。
返金
新しく加わる手続です。店が自分で行うか、返金に対応する事業者に委託します。
10月31日までに確認すること
1. 届出書を出しているか
「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」を出していない店は、10月31日で免税店の許可が効力を失います。提出している店は、11月1日に新しい制度の許可を受けたものとみなされるので、改めて申請する必要はありません。
いま、購入記録情報をシステムで送って免税販売をしている店は、提出済みのはずです。念のため、控えで確かめておくと安心です。
2. レジや免税システムが対応するか
新しい制度では、税関確認情報を照会して取得する機能が必要になります。利用しているシステム会社に、対応の時期と費用を確認してください。
3. 返金を誰が、どの方法で行うか
返金の方法は、消費税の法令では決められていません。国税庁の資料では、銀行振込、クレジットカードへの送金、アプリでの送金、出国する空港や港での現金による返金が例として挙げられています。
実際に、顧問先様から「返金はどうやって行えばよいのか」という問い合わせがありました。
小さな店が、帰国したお客様へ自分で送金するのは、現実的ではありません。返金先の確認、海外へ送金する手数料に加えて、資金決済に関する法律など、消費税法以外の法令への対応が必要になることがあるためです。そこで選択肢になるのが、返金を専門に請け負う事業者への委託です。
返金のサービスは、免税システムの会社が提供しているものが多く、たとえば J-TaxRefund(J&J Tax Free)、スマレジ、PIE VAT、JPrefund などがあります。返金に対応する予定の事業者の一覧は、全国免税店協会のウェブサイト(リファンド方式の特設ページ)に掲載されています。
まずは、いま使っている免税システムの会社が返金に対応するかを確かめてください。そのうえで、次の点を比べて、自分の店にとって使い勝手のよいところを選ぶのもひとつの方法です。
店が負担する費用(初期費用、月額、1件ごとの手数料)
お客様が負担する手数料と、選べる返金の手段(クレジットカード、アプリ、銀行口座、空港での現金など)
店頭での操作が増えるか、いまのレジのままで使えるか
返金に充てるお金を、いつ、どのように事業者へ渡すか
税関確認情報を、店が取得して保存できるか
最後の2つは、資金繰りと、免税の適用そのものにかかわります。委託しても、税関確認情報を保存する義務は店にあります。
なお、当事務所が特定の事業者をおすすめするものではありません。費用や条件は、各社にご確認ください。
4. 値札と店頭での説明
値札や店内の表示は、税込価格が基本になります。販売のときには、お客様に次のことを説明する必要があります。
購入した日から90日以内の出国時に、税関で確認を受けること
税関で求められたら、商品を見せられるようにしておくこと
確認を受けた商品を国外へ持ち出さなかった場合は、消費税が徴収され、罰則の対象になること
説明は、リーフレットを渡す、店内に掲示するなどの方法で行います。国税庁が、リファンド方式に対応した多言語のリーフレット(英語、中国語の簡体字と繁体字、韓国語、日本語を併記したもの)を用意しています。11月1日以降の販売から使います。
経理と消費税申告はこう変わる
販売したときは課税売上、あとで免税売上に振り替える
販売の時点では、国内のお客様への販売と同じく、課税売上として処理します。税関確認情報を保存した時点で、免税売上に振り替えます。税抜10,000円の商品を販売した場合の仕訳は、次のとおりです。
販売したとき
借方 現預金 11,000 / 貸方 売上(課税)10,000、仮受消費税 1,000
税関確認情報を保存したとき
借方 売上(課税)10,000 / 貸方 売上(免税)10,000
借方 仮受消費税 1,000 / 貸方 未払金 1,000
返金したとき
借方 未払金 1,000 / 貸方 現預金 1,000
振り替えは、1件ごとに行う方法のほか、月ごとなどにまとめて行う方法も認められています。件数が多い店は、月次でまとめる方法が現実的です。
決算をまたぐと、いったん消費税を納める
期末までに税関確認情報を取得できなかった販売は、その期は課税売上のまま申告し、消費税を納めます。翌期に税関確認情報を保存した時点で、次のどちらかの方法で調整します。毎期同じ方法を続けることが前提です。
売上げに係る対価の返還等があったものとして処理する
翌期の課税売上の合計から差し引く
お客様の出国は、購入から最長で90日後です。決算前の3か月に免税販売が多い店は、その期に納める消費税が増えます。納税資金を多めに見込んでおいてください。
お客様が税関の確認を受けなかったとき
免税にはならず、課税売上のままです。税関の確認より前に返金することもできますが、その場合にお客様が確認を受けなかったときは、返金後の金額で課税販売をしたことになります。先に返金するかどうかは、この点を踏まえて決めてください。
返金できなかったとき
口座番号の誤りなど、お客様側の事情で返金できず、お客様との取り決めで返金が不要になった金額は、雑益(消費税は不課税)として処理します。税関確認情報を保存していれば、免税の適用は受けられます。
保存は7年間
購入記録情報と税関確認情報は、販売した課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、保存します。
まとめ
10月31日までに、届出書の提出、システムの対応、返金の方法、店頭の表示と説明の4点を確認します。
11月1日以降の販売は、いったん課税売上として処理し、税関確認情報を保存してから免税売上に振り替えます。
決算をまたぐ販売は、いったん消費税を納めて翌期に調整します。決算前は納税資金に注意が必要です。
顧問税理士がいる方は、振り替えの方法と会計ソフトの設定を、11月までに相談しておくことをおすすめします。相談先がない方や、いまの処理に不安がある方は、当事務所の無料相談をご利用ください。当事務所は、海外との取引や外国人の雇用にかかわる国際税務にも対応しています。
この記事は、制度の一般的な説明です。個別の取扱いは、取引の内容によって変わることがあります。
出典
この記事を書いた人
松本 裕之(税理士)
松本裕之税理士事務所(広島市中区)代表。中国税理士会所属、税理士登録番号 第104810号。2006年に税理士登録、2013年に開業。税務顧問のほか、月次決算と経営計画、融資支援、国際税務、事業承継を扱っています。

